彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
「佳太くん!?」


思わず大きな声を上げて大慌ててで部屋を出て階段を駆け下りた。


玄関を開ける前に下駄箱の姿見で簡単に髪の毛をとかしつけた。


そして玄関を開けた瞬間佳太くんが私の両手を強く握りしめていた。


とっさのことで逃げることもできず、呆然と立ち尽くす私。


リビングにいた両親も何事かと出てきてしまった。


それでも佳太くんは私の手を離そうとはしなかった。


「君は誰だね」


後ろからお父さんの焦った声が聞こえてきて、お母さんが「知奈のお見舞いに来てくれた人よ」と、たしなめている。


そんな両親の姿なんて見えていない様子で佳太くんは強く強く私の手を握りしめる。


「どうしたの、佳太くん」


さっきまで失恋の痛みに悩んでいた私は今、佳太くんに会えたことでとても幸せを感じているから不思議だった。


失恋の相手は佳太くんで。


この胸の痛みは佳太くんがつけていったものなのに。


「昨日は傷つけてごめん!」


途端に佳太くんは深く頭を下げて言った。


「そのことなら、もう――」


「それに、自分の正体をずっと隠していたことも、ごめん!!」
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