彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

朝の公園には誰の姿もなかった。


公園の四隅にはアジサイが咲いていて、昨日の晩また少し降った雨で濡れていた。


「ここのアジサイは赤や青や紫と、色々あるんですね」


歩きながら私は目を細めて微笑む。


様々な色の花を咲かせるアジサイは、土によって色を変えると言われている。


こうして見てみると、同じ公園でも違う土があるのだということがよくわかる。


しかし後ろを歩く佳太くんはあまり話を聞いていないようで、返事がなかった。


「教育実習終わったんですね。おめでとうございます」


立ち止まって振り返り、私は笑顔でそう言った。


教育実習が終わるということはもう学校内で佳太くんに会うことはないということだ。


でもとにかく、佳太くんがひとつの大きな山場を終わらせたことは事実だ。


「あぁ……ありがとう」


佳太くんはぼんやりとした様子で返事をする。


その声には力がなかった。


「でも、どうして最初に教育実習生だって言ってくれなかったんですか?」
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