白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 そうしておそらくは何も知らないまま事件は収束して行く。この物語は、ロゼリエッタが動かずとも進行に何ら差し障りがないからだ。全てが終わった後で、全ての種明かしがされるという保証もない。

(でも、私はきっと――ううん、間違いなく何も知らないまま生きて行くのだわ)

 あくまでもこの屋敷には体調を悪くしている間、一時的に身を寄せさせてもらっているだけだ。馬車での移動に耐えられるほど回復したら、ほどなくして王都の封鎖も解除されるだろう。そうしたらすぐにでも領地へ出発出来るに違いなかった。


 その後はシェイドと別れ、ダヴィッドの手を取って、幸せになる。

 シェイドがそう決めたからだ。

(だったらどうして、放っておいてくれなかったの)

 シェイドはずっと、ロゼリエッタの元にいた。マーガスやレミリアの護衛はしなくて良いのかとロゼリエッタが気を回すほど、傍にいてくれる。

 でもそれだけだ。

 シェイドから話しかけて来ることはない。だからロゼリエッタも図書館で本を読んだり、借りた道具で刺繍をしたりして過ごしている。話し相手は主にオードリーが勤めてくれていた。


 話したいこと、聞きたいことがないわけじゃない。

 だけどアイリたちの無事を知った今となっては、何を聞いても自分が捨てられた理由に繋がるのではないか。そんな恐怖心が先立って口を開けないでいる。


 何より、傍にいられるだけで嬉しかった。

 だからロゼリエッタのことなど構わず、レミリアの元に行っていいと口に出せない。それで本当にシェイドが行ってしまうのを恐れていた。

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