白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 それもそうだろうと思う。

 友好的な関係を築けているのなら王位を巡って争った末、クーデターなど起こしたりしない。

 一方では正義とされることが別の視点から見たら悪であることもまた、主義主張や立場が違えば普通に起こり得る認識だ。世間知らずなロゼリエッタでも、それくらいは分かるつもりだった。

「その後、グスタフ王太子殿下は大きな病に罹ることもなく無事にご成人され、やはり王太子である殿下を国王に推す勢力が優勢だった為、継承権の序列に従ってグスタフ殿下が戴冠なさりました。しかし、話はそこで終わらなかったのです」

「フランツ王弟殿下は王位を諦めきれずにいたのですね」

「――はい」

 ロゼリエッタには、王位という地位の魅力は分からない。

 それでも古今東西、国を問わずそれを巡っての争いの記録がいくつもあるくらいには他人の、親兄弟の血を流してでも欲するほどに魅力を感じる人々もいるということだ。


 一歳しか違わない、母を異にする兄王子が王を務めるには不十分だと周囲に思われるほど身体が弱かったのなら。第二王子の周囲の人々の期待は彼に強く向けられたのではないだろうか。

 そこに母からの想いもあればなおさら、いつしか自らが望むようになったとしても不思議ではない。そうして継承権の順位を覆そうと努力も重ねた末に、手に入れられる兆しの見えたものが諦めきれなくなることもあるだろう。


 ただ、やはりそれが一国を治める立場となれば、個人が強く願うからと簡単に与えるわけにも行かないのも事実だった。

 ならばどうするか。


 ――力づくで、奪えばいい。


 きっとそう結論づけられた後だから、クーデターが起こったのだろう。

(でも)

 ふとロゼリエッタは気がついた。
 
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