白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 その想いの形が異性への愛情ではないのだとしても、ロゼリエッタは自分が思うよりずっとクロードに大切にされていた。

 別れを告げられた後でさえ、優しい世界に守られ続けていた。


 ロゼリエッタにできることなんて何もないだろう。

 だけど、何もしないでいることとは意味が全然違う。

 舞台の上で役割を持ってクロードを幸せにすることはできなくても、自ら舞台を下りて誰よりも彼の幸せを願って四葉を探しに行くことならできる。

 何度だって彼の為に四葉を探すことは、この世でいちばん彼を想うロゼリエッタしかできない。


 もう守ってくれなくても大丈夫だと、手を離せるのはロゼリエッタだけだ。


 強くなることは一緒に幸せになる為ではなく、別々に幸せになる為であることはやはり悲しいけれど。

「強くなりたいのは、クロード様の為?」

 ロゼリエッタは息を飲んだ。

 ダヴィッドの声色に責めるものはどこにもない。

 だけど後ろめたさから、責められている気がしてしまった。

「そ、うです」

 罪悪感で声が掠れた。

「ごめんなさい、ダヴィッド様。でも――自分の為にも、そうした方が、いいと思って」

 取り繕うような言葉を必死で続ける。

 それこそが自分の為で、保身で、そんなすぐに強くなどなれないと実証していた。

「いや、これでも俺は君の気持ちは全て理解して、そのうえで接しているつもりだよ。だから別に君が謝る必要はない」

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