白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 二人から少し離れた場所に、穏やかな笑みを浮かべた女性が立っていた。

 ロゼリエッタは凛とした一輪のバラのようなその姿を見やる。

 思った通り、目の前にいた人物はレミリアだった。

「ロゼ、あなたが無事で本当に良かった」

 気持ちの整理がまるで追いつかない。


 レミリアがダヴィッドに事情を説明したのも、まだ家に帰れないロゼリエッタを保護してくれることも聞いていた。だから顔を合わせるのも自然なことだ。

 分かっていた。でも、分かっていたつもりなだけだ。


 できることなら会わずにいたかった。

「身体が弱いのに歩かせてしまってごめんなさいね。馬車で迎えに行ければ良かったのだけど、人目は極力避けたかったものだから。ラウレンディス卿も、迎えを快く引き受けてくれて感謝致します」

「滅相もございません。こちらとしても従妹ロゼリエッタの身は心配ですし、この役目を一任して下さったご慈悲に深い感謝の念を申し上げます」

 王女の身でありながら、レミリアは自分の非を素直に認めて貴族子女の二人に詫びる。

 相変わらず身も心もとても美しい彼女は女神のようだった。

 自分と比較したってどうにもならない。それでも劣等感に揺れてしまう心を宥め、ロゼリエッタは前に踏み出す為に淑女の礼をして口を開く。

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