白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

37. 悔いのない未来を描く為に

 不思議と、冷静さは失わなかった。


 ダヴィッドにその可能性を示唆されていたし、何よりクロードが無実だと知っている。

 犯してもいない罪をでっち上げ、裁きにかけるのは簡単なことではないだろう。ましてやクロードは公爵家の子息だ。それに第一王女レミリアの護衛騎士で、隣国の今は亡き第三王子アーネストの忘れ形見でもある。身の潔白を証明するに当たって、これ以上の後押しもない。

「クロードの無事を信じているのね」

 落ち着いた様子のロゼリエッタに、レミリアは微笑みかけた。

 けれどそれは少し誤解されているように思う。ロゼリエッタはどう答えて良いか分からないまま、ただ静かに首を振った。

「ご無事であれば良いと、願っているだけです」

 冤罪をかけられているのはロゼリエッタだ。

 だから本当はロゼリエッタが拘束されるべきで、けれどロゼリエッタは冤罪を晴らす手段を持たない。それでクロードが身代わりになった。そんな気がしてならないのだ。

「ロゼ。せっかくの機会だから、あなたの疑問に全て……は無理だけれど、できる限り答えましょう。他にも聞きたいことはたくさんあるでしょう?」

「よろしいのですか?」

「私が答えられる範囲であれば、だけど」

 願ってもない申し出だった。

 でもレミリアの言う通り、聞きたいことはたくさんありすぎて逆に何から尋ねたら良いのか分からない。


 困っていると隣にいるダヴィッドが立ち上がった。突然の行動にロゼリエッタとレミリアは揃って彼の顔を仰ぐ。二人分の視線を受け、苦笑いを浮かべたダヴィッドは(うやうや)しく礼をした。

「可憐なレディたちの内緒話は非常に興味のあるところですが、ここは退室した方が良さそうですね」

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