白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 でも今は言葉も交わさずに右側の壁沿いを進む。そうしてテーブルとセットになった、入口付近にあるものより豪華な二人がけの椅子にレミリアと共に着席した。


 一方、正面の壁沿いに置かれた長テーブルの向こうには、ゆったりとした黒の法衣を纏う七人の貴族がすでに鎮座している。

 クロードを乗せた天秤がどちらに傾くか。全ては話し合いの末に彼らの意思で決められる。けれど、ロゼリエッタだけは自分が天秤を揺らすことができると信じていた。それぞれにロゼリエッタとクロードの"罪"を乗せれば、きっと釣り合う、と。

(だって、私たちは何もしていないのだもの)

 ロゼリエッタは静かに目を閉じる。


 ずっと考えていた。

 確かにクロードへの冤罪は簡単に晴れるだろう。

 でも本当に、それだけなのかと。


 本当に晴らすべきは、ロゼリエッタにかけられた冤罪だ。

 ロゼリエッタの無実を証明しなければ、クロードはまた利用されることがあるかもしれない。

 いつまでもロゼリエッタの存在が枷になってしまう。


 それは仄暗い甘美を覚えさせてしまうけれど、知らない場所で一人で苦しんで欲しくない。


 だから、ロゼリエッタが彼を守る。

「後は陛下が立ち合われるだけでしょうか?」

 刻々と近づく開廷の時間に、ロゼリエッタは奥の扉を見やった。

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