白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

41. 王女の償い

「どうかこれらの物的証拠が、我らが聡明な主君の公正なご判断の助けとなれば光栄に存じます」

 スタンレー公爵は王に一礼すると、結果を聞かずとも確信した面持ちで元に座っていた席に戻って行く。


 ロゼリエッタは顔を青ざめさせ、頽れるように椅子にへたり込んだ。

(私は、どうしたら)

 クロードはこの場では有罪とされても、すぐに嫌疑が晴れる筋書きだっただろう。

 それがロゼリエッタも有罪となれば、マーガスにはどうしようもできない。

 貴族たちもどう対処すべきか困惑気味に王の指示を待っていた。しかし当の王は"証拠"の手紙を見ながら思案に耽っている様子だ。


 余計なことをしてしまった。

 ロゼリエッタの行動が、逆にクロードを追い詰める結果になってしまった。

「ロゼ」

 膝の上で震えるだけの手にレミリアのそれが重ねられた。安心させるようにぎゅっと包み込まれ、レミリアを見つめる。

 自分の無力さに涙がこぼれた。

 まともな策も持たない浅慮のまま先走っただけだ。正しいと思って行動したことのはずなのに、本当に正しいのか分からなくなった。

「ありがとう、ロゼ」

 レミリアは柔らかく微笑んだ。

 お礼を言われるようなことなど何もしていない。


 ロゼリエッタは首を振り、俯いた。

 一雫の涙が手の甲に落ちて弾け散る。

 それはまるで、最後に残されていた希望が砕けてしまったかのように見えた。

「私は、何も」

「いいえ。だから泣かずに顔を上げていてちょうだい。あなたやクロードの無実は私たちが知っているわ」

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