白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「大丈夫よ。着替えの準備を手伝ってくれる?」

「では、ダヴィッド様に少しお待ちいただくようお伝えして参りますね」

「ありがとう」

 それからアイリの手を借りてベッドの端に背中を大きくもたせかける。


 他の女の子たちのように健康な身体であったのなら、隣国にも連れて行ってもらえたのだろうか。


 そんな思いがふと脳裏をよぎった。

 でも、もしそうであったのだとしても今さらどうしようもないことだ。


 着替えを済ませ、レース編みのショールを羽織る。ベッドから出られたら良かったけれど、まだ熱っぽいことには変わらない。それはさすがにだめだとアイリに猛反対されてしまった。




「具合はどうだい、ロゼ」

 先日の夜会振りに会うダヴィッドは、お見舞いの花束をアイリに渡すとベッド脇に置かれた椅子に腰を下ろした。

「わざわざお見舞いにいらして下さったのに、お待たせして申し訳ありません」

「いや、事前に何の連絡もなしに急に訪ねて来たのは僕だから気にしなくて大丈夫だよ。いくら従兄とは言え、出迎えるのに身支度は必要だしね」

 相変わらずの軽口にロゼリエッタの唇の端が笑みの形を描く。ほんの少し気分も軽くなった気がして従兄に問いかけた。

「今日はどうなさったのですか?」

「君がここ数日間ずっと臥せっているとレオニールに聞けば、さすがに心配にもなるよ」

「お兄様から?」

 兄とダヴィッドが会うというのもあまりないことだ。

 それこそ沈みがちのロゼリエッタを気にして、元気づけてやって欲しいと兄から訪ねたのだろうか。でもそれならロゼリエッタの熱が引くまで待っている方が、兄の行動理念としては自然な気がした。

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