白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「お疲れ、ロゼ」

 廊下に出ると父と兄、そしてアイリが待っていた。父が仕事の為に登城する際、一緒に連れて来てもらったのだ。自分用の馬車で登城しているレオニールも、城内で落ち合って付き添ってくれた。

「頑張ったね。家に戻って、ゆっくりおやすみ」

「はい」

 優しく頭を撫でながら告げる兄の言葉にロゼリエッタは頷く。

 これから王城内での仕事がある父や兄とは違い、ロゼリエッタが王城に留まる理由もない。

 もう、全てが終わったのだ。父の馬車を借りる手配も整っているし、兄の言うように家に戻って、何も考えずにゆっくりしよう。

「恐れ入ります。ロゼリエッタ・カルヴァネス様であらせますでしょうか」

 父と兄に別れを済ませたロゼリエッタに、一人の女性が声をかけて来た。濃紺のお仕着せに身を包む彼女は、おそらくは王城に勤める侍女だろう。


 けれどロゼリエッタが声をかけられる覚えはまるでない。侍女からの問いかけを肯定はしたものの、その後どう言葉を続けたら良いのか分からずに次の動きを待つ。


 行儀見習いとして勤めているのか、侍女はとても綺麗な所作で礼をするとロゼリエッタを真っすぐに見つめた。

「レミリア王女殿下が、ロゼリエッタ様にご用があるとのことです。急なお話ではありますがどうぞ足をお運び下さい」

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