sugar spot




必死に零れ落ちる前に拭って、PCを詰め込んで重さを増したバッグを肩にかけた時だった。

フロアの入り口の方でカタン、と物音が聞こえたのと、なんとなく人の気配を感じたのは同時だった。


「……っ、」

振り返ってしまったことを、後悔している。




なんで。


絶対居るはずの無い人物を視界に捕らえたら、先程まで持ち上げるのが重かった足は反射的に動いた。

そのまま、男が居るのとは別の出口へ慌てて向かう。


「……っ、おい…!」

らしくない慌てた声で呼びかけられても、
もう振り返らない。





______なんで、居るの。


今日も一日中現場だったようで、全然オフィスに居なかった。

そのまま1人で"あの場所"に行ってるのかな、くらいに思っていたのに。




こんな情けない顔、絶対、見られたくない。

慌てて廊下を走り切って、一階に繋がっているエレベーターのボタンを連打する。

早く来て欲しいと焦る私を嘲笑うような、チーン、なんて軽快で間抜けないつもの到着音で、ゆっくりとその扉が時間をかけて開く。

半開きの状態の時から、慌てて身体を滑り込ませるようにして、その箱の中に入ろうとした。



「_____ふざけんなお前。」

「、」


でも、後ろから不機嫌最高潮な声で呟かれて、
ぐい、と腕を後ろに引かれて。

エレベーターに乗り込むことは叶わず、あっさり廊下へと引き戻された私は、珍しく息を切らして、いつもの能面を歪ませた男に身体を拘束されてしまった。


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