sugar spot
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「……ひっどい顔。」
トイレの洗面所で鏡を前に呟いた言葉が寂しく落ちた。
あの後、なんとか今日予定していた業務はキリのいいところまで終えて、トイレの個室で1人になった瞬間、何かの糸が切れたかのように、涙が溢れて止まらなくなってしまった。
数十分、そこに居座って、よろよろと個室の扉を開けたら泣き腫らしたせいで目の腫れた酷い顔の自分が、滑稽に鏡に映っていた。
こんな顔、正直誰にも見せられない。
「…もう19時か。」
今日は金曜だし、残業せずに帰る人も多いようで、トイレも既に貸切状態だ。
とても静かな沈黙が続いている。
《ごめん。
今日、仕事立て込みすぎてやっぱり行けない。》
ついさっきあの能面に送ったメッセージに返事は無い。だけど既読は付いているので、一応本人には伝わっているから問題は無いと思う。
「……、」
"ちゃんと連れてくから、頑張れ"と。
あのぶっきら棒な声で言われた言葉を
勝手にこの数週間、支えにしていた。
だけど、私、全然頑張ってない。
失敗だらけで、何一つうまく、こなせない。
トイレを出て、フロアに戻ると既に所々電気も消えていて、薄暗い空間には、人影が全く無かった。
「……みんな帰りたいよね。」
だって今日は、浮き足立つはずの金曜日だ。
でも私の両足首には、あまりに重い鉛が付いているかのようで、それに伴って足取りも当然重い。
なんとか引き摺って、自分のデスクまでゆっくりと戻る。
「や、ば、」
懸命に、さっき何度も何度も拭ったはずなのに。
ただ、帰り支度をしているだけで
また涙が出そうになっている自分が恐ろしい。
涙腺が壊れきってしまっているらしい。