sugar spot
◻︎
「今日天気良くてよかったね。
座るのこの辺で良い?」
「あ、はい!」
ふわりといつも見てきた可愛い笑顔の彼女と、オフィスのビルを抜けてキッチンカーが集まった広場にやってきた。
真夏の刺すような光が漸く少し和らいできた最近は、快い風が穏やかに吹いている。
広場には、お弁当をその場で食べられるようにテーブルとイスが多く設置されており、私達と同じようにランチにやって来た人々で賑わっていた。
お財布片手に、数台並ぶキッチンカーを見渡しつつ「何食べようかなあ」と呟くちひろさんの横顔を盗み見て、先程の会話を思い出した。
_______
「…ちひろ、さん。」
「梨木ちゃん、展示会ぶり。」
「どうして。」
横暴な吉澤さんに謎の予定を組まれて戸惑いながら会議室を出たら、私の大好きな人が居た。
「可愛い後輩がいつまで経ってもランチに誘ってくれないので、こちらからお誘いに参りました。」
「…だって、ちひろさん、お忙しいですよね?」
「お忙しくても、後輩からの要請には応えるって展示会で言ったよ?」
たしかに言ってくれた。
だけど、私は、この人には
1番心配をかけたくなかった。
情けない表情で言葉もなく笑ったら、
「後輩が頼って来てくれるとかちょっと、
先輩として格好良いでしょ?」
「…はい…?」
急に突拍子も無い質問を投げられた。
「"そうか、話聞くよ!ご飯でも行こうか!"
に憧れてその台詞練習しながら待ってたけど、梨木ちゃん来ないんだ全然。
私が会いに来てしまって計画台無しですが、まあ顔見たかったから良し。セーフ。」
"この椅子は昨日勉強したばかりホヤホヤなので
私、語れてしまいます。セーフ。
知識ゼロ、助かります。"
ちひろさんは、「セーフ」の使い方が独特な気がする。
初めて会った時から、私はこの人の、何故だか心を明るい方に勝手に導いてくれる言葉に、空気に、いつも助けられてしまう。
「ちひろ先輩、私、仕事ドン詰まってます。」
「……ドン詰まりかあ。正直で良いね。」
クスリと笑って受け止めてくれる柔らかな表情を見てたら、それと裏腹に私はどんどん顔が歪む。
「…ちひろさんと、話、したいです。」
声を震わせながら、私の本心を引き摺り出したら、ぽんぽんと軽く頭を撫でたちひろさんは
「梨木ちゃん。ご飯食べに行こ。」
やっと言えた、とまた笑ってそのまま私をビルから連れ出した。