sugar spot

◻︎


「次回のアポイントも、早々に調整する予定です。」

"そうか。次は、俺も行くから。"

「…部長すみません。」

"なに?"

「コストカットを相手に提案したということは、その、当然、うちの売上にも影響します。」


"そうだなあ。先方の要望にばっかり応えて、うちの採算が取れないのは確かに意味がない。"

「……はい。」


"でも梨木が頑張らなかったら、もう既に案件そのものが無くなって、0だったかもしれない。"

「…、」

"此処からだよ。
この案件はやって良かったんだって示す方法は、此処からいくらでもある。
へばったり、まだ結果も出てない部分に落ち込んでる場合じゃ無い。"


△社のオフィスを後にして、直ぐに部長に連絡をした。
そうだ、此処から、敷波さんの社内プレゼンをはじめ、色んなことがある。

はい、と確かめて頷いたら、


"梨木、よくやった。"

「…気がはやいです。」


何もなし得ていないのに労いの言葉を受け取って、苦く笑いながら返答する。


"良いんだよ。定期的に自分を認めないと、やってられないだろ。
少なくとも、今日に向けて頑張った自分は褒めろ。"


キャリアをどんなに重ねても、そうなのだろうか。

毎日、少し歩いてみて、その足跡を振り返る。

今日の進みはこんなもんかってたまに笑って、なんとか向き合っていく。


ずっと、そうやって付き合っていくのかもしれない。






「今日は直帰で良い」という部長の言葉に甘えて、急にフリーになった私は、溜まっていたスマホのメッセージを確認した。


《花緒、今日行く?》

奈憂からの個人メッセージに1番に気がついて、何の話だと首を捻る。


《なにが?》

《え、グループLINE見てないの。長濱が煩いから、急でも集まれる人で今日飲もうって。
仕事忙しい?》

直ぐに返ってきたメッセージで、状況を漸く把握した。


《待ってるから、早く帰ってこい》


そして、お昼に交わした言葉も思い出す。

あの男は、どうするのだろう。
待ってると言われたけど、具体的な話は何もしなかったし、別にそれは今日じゃないのかもしれない。


《有里、来るのかな》

《それは推しの出欠確認を今直ぐしろってこと?》


この女、なんでこんな返信が早いんだろう。
奈憂って仕事してるの、と尋ねたら「自分のどの仕事より進捗確認大事にしてる案件だから」と即答されて、それもどうなのだろうと思う。


《まあ、花緒が来るならアーリーも来るよ》

《…なんで?》

《そこまで、私が言った方がいいの?
花緒って、馬鹿だけどそんなに馬鹿じゃないでしょ?》

馬鹿を肯定されてるのか否定されてるのか。

溜息を漏らしつつ「自分で聞く」と返事をすると、とても暑苦しいおじさんがgood job!とこちらに語りかけているスタンプを爆押しされた。

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