sugar spot
「おい。首、苦しいんだけど。」
「……」
「絞め殺されそう。」
「、そんなに力入れて無いし。」
勿論大袈裟にそう告げた瞬間、不服そうな声が届いて俺の首に回っていた細い腕の拘束が緩む。
それを逃がさず、すぐに体勢を戻して、ちょっと尖った唇に自分のものをまた飽きずに重ねた。
「やっぱり嘘つき。」
照れ隠しの非難に戦闘力は皆無で、思わず口端が意図せず上がった。
至近距離で見つめ合う先の濡れた瞳の中に自分だけが映っていると思うだけで、満たされる気持ちがある。
こんなの、どうしたってこいつにしか抱かない感情だと、嫌というほどに自覚している。
真っ赤な顔で弱々しく手渡された主導権でテレビを消した瞬間、当たり前のように部屋には静寂が訪れた。
そのことに少しだけまた、組み敷いている女の身体を緊張が包むのを感じて、宥めるように頬に唇を落とす。
擽ったそうな無防備な表情を見ると、
嗜虐心と庇護欲の狭間で滑稽に自分の感情が揺れた。
「…穂高。」
こいつに名前を呼ばれるのは、まだ慣れない。
違和感の中で、だけど嫌では無い速い鼓動を確実に刻みながら視線を絡ませたら、何を思ったか女は、自分の手を俺の頬に近づけてきた。
なに、と尋ねる前には両頬に触れられ、そのまま抓って横に思い切り伸ばされる。
突如の行動に理解が追いつかず、何度かの瞬き分の時間をただ見つめ合ってしまった後、女がふ、と可笑しそうに空気を揺らして笑った。
「……こうしたらあんたも
流石に間抜けな顔になるんだね。」
「お前は何をしてんの。」
女の両手をすぐに引き剥がしたけど、恐らく数秒間は言われた通りの間抜けな顔を晒してしまった。
なんなんだこいつは。
意味が分からないと顰めっ面で見つめると、
「だって、大体ずっと能面だし。むかつく。」
「は?」
失礼な言葉を重ねられる。
そのくせに剥いだ手の指を緩く絡めながら
「…私と同じように緊張で焦ったりとか、
表情崩れてるとこも、たまには見たい。」
そのまま弱く眉を下げて告げられた瞬間に
もう、何かが振り切れてしまった。
女の背中に腕を回して引き寄せれば、そこまで力を入れなくても、その小柄な身体を抱き起こすことは容易い。
いきなり視界が再び変わったことに目を白黒させているそいつの首裏に手を当てて、唇に軽く噛みついた後。
仕返しを含めて、柔らかく曲線を描く頬を思い切り抓る。
「おい馬鹿。」
「……痛い。なに。」
またか、と言いたげな睨みのまま結局は返事をしてくるその矛盾に笑いを堪えて、
「お前の言う"イチャイチャ"って何。」
「…え?」
ストレートに尋ねると、聞き返しながらも、また際限無くその頬が赤みを増した。