sugar spot
告げ終えた女の顔は、また更に赤みを増す。
何かに耐えられなくなったのか、自分の手でその顔を覆い隠そうとするから、直ぐに両方の手首を掴んでソファに縫い付けた。
視線を合わせるしか無くなって、不服そうに俺を上目遣いに見上げてきて、そういう顔さえもっと見たいと思う理由を、とっくに知ってしまっている。
『……わたし、穂高のことを
意識しなかったこと、いっかいも、無いよ。』
反芻したら、心臓の動き方が変わったような気がする。それに伴う熱が、触れた部分からこいつに伝染してしまわないように、落ち着かせるように1つ息を溢した。
「……背中に、リモコン当たって、痛い。」
「うん。」
先程奪い合ったそれは、どうやら女とシートの隙間にまだ転がっているらしい。
もっと顔を近づけたら、テレビから流れるライブの音に紛れてソファがまた、短く悲鳴を上げた。
「どうする。」
「…なにが?」
「DVD、まだ観る?」
尋ねるとその言葉を咀嚼し終えた女が、尖った瞳に赤らんだ顔というちぐはぐさで、「腕、離して」と要求してくる。
渋々応じると、とてもぎこちない動作でリモコンを俺の胸元に押し付けてきた。
「…なに?」
「……、」
受け取ってしまえば、当然俺はテレビを消す。
この女だって、きっと分かっている。
それでも押し付けられたそれを手にした瞬間、細く白い2本の腕が俺の首に回って、ぎゅう、とありったけの力を込められた。
狭いソファで女がそのまま自分の方へ引き寄せてくるから、体重がダイレクトにかからないように、咄嗟に片腕を背もたれについて耐える。
耳元にすり、と頬を寄せられれば、大きく鼓動が打たれた。
「…DVD消されたら、もっと緊張する。」
そのまますぐに耳に入ってくる微かな声が鼓膜を揺らす。
「ん。」
「…でも静かな方が、
ムード的には、多分良いから、」
「…なんのムード?」
「なんでそこ深掘りしてくるの?」
「確認作業。お前すぐ勘違いするから。」
「…だ、だから、」
イチャイチャする時でしょ。
よほど顔を見られたくないらしい。
特に最後の言葉は、本当に痛いくらいの力で抱きついたまま告げてくれるお陰で、女の表情は何一つ見えなかった。
精一杯の本音を脳内で繰り返したら、また口元が緩む自覚はあるけど、どうせこいつには見えないから我慢せず表情をほぐす。