sugar spot




「なんで?お酒トレーニング、引退したんじゃなかったの?」

「そうだよ、無理して飲むこと全然ないよ。」

心から驚いた表情の奈憂と、優しく諭してくれるちひろさんに慌てて「違います」と首を横に振る。


「勿論、前みたいに無理はしないので…!
ちょっと、飲みたい気分になった、というか。」


「ええ〜〜アーリーにバレたらどうするの!?」

「……いや、まず言わないとバレないから。」

「私は推しに嫌われたく無いから、もし聞かれたら誤魔化したりしないよ?」

「…奈憂は私とあの男どっちの味方なの。」

「推しは毎日優勝してるから比較対象にはならない。なんかごめんね。」


…謝られてしまった。あの男に、また負けた。


言葉を失っていると

「アーリーに怒られても知らないよ?」

と困った顔で、言葉を重ねられる。


“酒は飲むなよ“


確かに今日、そう忠告を受けたけれど。


「あの能面は能面だから、
怒ってもよく分かんないし。」


「……ちょっと待て。
今日は根掘り葉掘り聴きたいのに、
あんたらまさか、付き合ってからも拗れてるわけ?」


奈憂に硬い声で返事をしたのを聞いていたのか、おしぼりをこちらに渡してくれる4人テーブルの斜め前に座る亜子さんの表情が、険しさを帯びていた。


「…こ、拗れてないです。」

別に、喧嘩をしたわけでは無い。


「じゃあラブラブ?」

ラブラブ、とは。

こてん、と小首を傾げて愛らしく尋ねられて、また上手く反応を返せない。

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