sugar spot
「……」
「……」
瀬尾さんに置いて行かれて、とりあえず会議室を出たところで、お互い無言のままに立ち尽くす。
ノートを握りしめる手に意図せず力を込めつつ、「ねえ」と呼べば、アーモンド型の綺麗な瞳がこちらに向けられた。
全く1ミリたりとも動かない能面にやはり苛立ちが募る。
こいつ、もうちょっとくらい愛想良く出来ないのだろうか。
「……なんだよ。」
「……図面、教えてもらってやっても良いけど?」
「は?」
な ん だ、そ の 発 言。
自分でも突っ込みたくなる不思議な失言に、遠慮なく眉間に皺を寄せて顔を歪ませた男が、まるでヤバいものを見ているかのような視線を向けてきている。
うざい。
「……いや、何でもない。じゃ、さよなら。」
ヤバい言葉だったなんて自分が一番分かってる。
後悔に苛まれながら、自席へ戻ろうと男を置いてそのまま歩き始めると「梨木。」と、低い声で呼ばれた。
恐る恐る振り返ると、
こういう時だけは、ほんの少しだけ口角を上げて。
「…図面、教えてやっても、良いけど?」
子憎たらしいほど綺麗な所作で、小首を傾げてそう投げてきた長身の男の言葉を理解すれば、ますます小馬鹿にされた気分になってきた。
顔の熱も、反射的に上昇している気がする。
「…結構です!!!」
先に言ったのは私だけど、あの男が背後で馬鹿にしたように笑っている気がして、振り切るようにずんずんと歩みを前にだけ進めることに注力した。