sugar spot
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「…途方もねえ…」
腹立たしい回想を終えた私は、再び絶望を呟く。
デスクいっぱいに広げられた、とある図面は、見つめているだけじゃ何一つ答えを得られそうに無い。
暗号なのだろうか、これは。
「…やっぱり瀬尾さんにもっと聞けばよかった…」
ぽつんと後悔を呟いたら首も垂れてしまって、息を長く吐き出した。
_____私が何をしてるか、と言うと。
通常、各企業からオフィスのリニューアルや移転を引き受けた場合。
チームを組むデザイン部や設計部メンバーによって作成された『完成形のオフィス』の図面を受け取った営業部は、そこから「どんな家具が、スケジュールを見越していつまでに、いくつ必要になるか」を読み取って全ての発注を行う必要がある。
"拾い出し"と呼ばれるこの作業は、オフィス家具メーカーの営業では欠かせないとされているもの、らしい。
配属されてから知った。
営業は、ただ外回りしてるだけじゃ無いんだって頭では分かっていたつもりだけど、こんなに色んな知識が必要になる覚悟、全然出来てなかった。
古い図面を見て、とりあえず拾い出しの練習をやってみてはいるけど。
図面に書かれた用語も、そこから読み取って発注すべき家具を拾い出す作業も、途方もないし全てがちんぷんかんぷんだ。
「____お、苦戦中?」
険しい表情で視線を落としていると、ふと、穏やかな声が耳に優しく入ってくる。
「…な、南雲さん。お疲れ様です。」
垂れた瞳が印象的な彼は、穏やかに表情を緩めて私のすぐそばに立っていて。
そしてチラリ、広げていた図面を一瞥して「あー、この案件懐かしいな。」と楽しそうに言った。