拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
「頼むよ。変に身構えなくていいからさ、一回飲み会開いてよ。」

「真田君って、和美と何かで一緒になったことなるの?」

「ないけど・・。たまに総務部行くと、奥にある広報部見えるじゃん。和美ちゃん背高いしスタイル良くて凄い目立っててさあ。一度話してみたいなって。」

なんか軽いな。和美と合わせて大丈夫だろうか。取り敢えず今夜会ったときに聞いてみよう。
立ち話している間に吉田さんと須藤さんは先に戻ってしまった。まだ打ち合わせの続きがあるかもしれないので、私もソワソワしてくる。

「じゃあ、行くね。浦橋くんたちもお昼これからだよね?」

「おう。またな。」

浦橋くんが目を細めて薄く笑い、手を振ってきた。私も苦笑いをしながら手を振り返し、その場を後にする。



夜、定時を1時間ほど過ぎてしまったが、和美と待ち合わせのお店に急いで向かう。以前和美に紹介してもらった和美の従妹さんの友達の田中さんが働いているお店だ。

お店に着くと、年配のマスターを相手に和美が既に飲み始めていた。

「ごめん。お待たせ」

「ううん。マスターが相手してくれたから、楽しく待てたよ。」

「今日は田中さんは?」

「いないみたい。かっちゃん、昼間は別の仕事してるから」

「そうなの?」

聞くところによると、昼間はサラリーマンで会社に勤めているらしいのだが、お父様が飲食業をしていて、何店舗か手広くやっているらしく、将来お父様を継ぐことがきまっており、夜はできるだけお父さんのお店の仕事をお手伝いしているとのことだった。

「じゃあ、このお店も田中さんのお父様の?」

「そう」

以前来た時、田中さんがカウンターの中でシェイカーを振る姿は熟練されていたものだった。それに田中さんの見た目も、色白でほっそりとして中性的な色気があって、夜の街に似合っているイメージだったので昼間は普通のサラリーマンだというのがかなり意外だった。

そんな話をしていると、入り口からカランと上品な音が聞こえ、何気なく顔を向けると、田中さんが入ってくるのが見えた。

「遅くなってすみません」

「おう、お疲れ。まだ空いてるし、慌てなくて大丈夫だよ。」

マスターが微笑みながら静かに言うと、田中さんは軽く頭を下げて、和美におう、と声を掛け、私にも、こんにちは、と言ってくれる。
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