拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
そろそろお腹いっぱいになったころ、空いたお皿を下げにきたアルバイトらしき女の子に、声をかけられた。

「この時計、彼女さんがプレゼントしたんですよね?」

女の子は牧野くんの左手首にまかれている腕時計を差しながら私に言った。

この時計は牧野くんの彼女が牧野くんにプレゼントしたってことかな?私は牧野くんの彼女と間違われているということだろうか。
何と答えていいのかわからず戸惑っていると、店長が後ろから慌てた様子でやってきた。

「バカ、違うかから・・・」

店長が女の子を引っ張って行きながら、私に愛想笑いをしながら奥に戻って行った。

私を彼女と間違えたってことか。

・・・最近頻繁に私に連絡があるし・・・・、この前会った時も、私を口説くようなことを言っていた。
もしかしたら彼女と別れたかも・・と想像していたのだが、違ったか。

ふと、牧野くんの顔を見ると、気まずそうに眼をそらす。

・・・・別に・・・気まずそうにしなくたって。。
彼女とは別れてないってことはわかった。

性懲りもなくまた淡い期待をしていしまっていた自分のバカさ加減にうんざりしたが、半分以上は予想していたことだ。
そこまでショックではない・・・はずだ。

何となく気まずいまま、牧野くんがお肉を次々に焼いてくれるが、急に食欲がなくなり、サワーを頼んでもらい、グビグビっと飲む。
飲みなれないのど越しのせいか、一瞬口の中がカッっとなる。いつも田中さんかマスターが作ってくれるジュースみたいなカクテルしか飲んでいないし、久しぶりのちゃんとしたお酒だ。

その後も全然箸が進まず、間が持たないため、飲み続けてしまい、頭がガンガンしてきた。

すっかり口数が少なくなった私を気遣うように、牧野くんが私の顔を覗き込んで言った。

「大丈夫か?顔が真っ赤だぞ」

「うん。トイレ行ってくるね」

バッグを持って席を立つと、先ほど私を彼女だと間違えた女の子の店員さんがお手洗いの場所を手で示してくれる。

トイレに入る直前、チラリと席の方を見ると、女の子が、両手を合わせてごめんなさい、のポーズをしながら牧野君の側に近寄って行くのが見えた。
私を彼女と間違えたことについて謝ているのだろうが・・・別に牧野くんに謝ることじゃないだろうに、と少し納得できない気持ちにまるが、それもまあどうでもいいか。

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