拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
私の腕を持ったままタクシーを止めると、私を押し込むように乗せる。

「お前、もう帰るよな?」

「はい?・・・はい、帰ります」

まさか、もう一軒とか言うつもりだろうか。明日も会社なのに・・・

隣に須藤さんが乗り込んできたので、驚いて聞いてみる。

「遠回りですよ。一人で大丈夫です」

「引っ越したんだよ。柴田の家の側」

そうだったのか・・・。だとしたら、私の家とも近い。
だからこの前、中澤君たちと飲んだ後、偶然会ったとき、送る、って言ってくれたんだ。
確か、もう1年以上前になるが、一度だけ送ってもらったことがあった。
浦橋くんの元カノ・・・松本さんに会社の前で待ち伏せされていたときだった。少しだけ話、松本さんと別れた後、駅で須藤さんが待っててくれたのだ。心配してタクシーで送ってくれたのだった。
その時は確か、別方向だったのは覚えている。

「いつ引っ越したんですか?」

「一年前くらい・・・ってこの話前もしたぞ」

・・・・そうだったか・・・全く覚えてない。それにしてもそんなにたつのか。

「・・・ったく。お前、全然俺に興味ないのな」

「そういうわけじゃないですけど・・・」

たまたま須藤さんのことが記憶にとどまってなかっただけで、興味ないとか、そういうわけではないのだが・・・・。

先に私の家に着き、奥に座っていた私が降りれるように、須藤さんも降りてくれる。

「お疲れ。ゆっくり休め」

そう言って私の頬に手を伸ばしてくる。
びっくりして一歩下がると、少し顔を歪めて、じゃあ、おやすみ、と言ってタクシーに乗り込んだ。

タクシーを見送ろうと立って待っていると、須藤さんが窓を開けて、早く入れ、と顔で後ろをさした。

ありがとうございました、と頭を下げて部屋に入る。

ふう、なんだか疲れた・・・。だいぶ慣れたとはいえ、須藤さんと一緒は緊張する。

来週会うときは、懇親会と柴田さんや和美が一緒なので、そこまで緊張しないだろう。

翌週の水曜日
営企と経企部の合同プロジェクトの懇親会は盛況だった。

須藤さんに動き回らせるわけには行かないため、私ができる限りがんばっていたが、見かねた木村君が手伝ってくれた。

「木村君、ありがとう。すっごく助かった」

「全然いいよ。ってかむしろもっと早く言って。幹事だったら俺うやるよ」

< 189 / 250 >

この作品をシェア

pagetop