拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
私が入り口のところまで和美を見送ろうと歩き出すと、田中さんも一緒に入り口まで来て、ドアを持ってくれる。

「また連絡するね」

「うん。落ち着いたらまたご飯食べよ」

この先いつ会えるのか・・・和美の体調が何より大事だとは思うのだが、しばらく会えないのかも、と思うと寂しくて仕方がない。名残惜しくて和美の背中を見送っていると、田中さんが、ツン、と肩をつっついてきて、入ろう、と言って私の背中を押した。

私の寂しそうな顔に気づいたのか、私の頭をポン、と撫で、田中さんはふわり、と笑った。

元居た席に戻ろうと振り返ると、須藤さんが歩いてくるところだった。
近づいてくると、私の腕を掴んで、腰を抱くようにして席に促し、私を座らせると、飲み物どうする?と聞いてきた。

先日のカフェでのやりとりを思い出し、気まずさから返事をできないでいると、更に聞いてきた。

「まだ時間大丈夫?」

「大丈夫です」

そう答えると、
軽めのカクテルを須藤さんが頼んでくれて、田中さんが出してくれるのを待つと、須藤さんが切り出してきた。

「この前は悪かった。ごめん」

「いえ。私も言い返したりしてすみませんでした」

「言い返すことは悪いことじゃないだろう。寧ろ、お前の思ってること持って聞きたいと思ってるよ、いつも」

「・・・」

「お前なりに考えてたこと、木村から聞いた」

穏やかな口調で、しっかりと私に視線を合わせて言ってくれる。その目はとても優しい目だ。

「言い訳になるかもしれないが、お前らしくないって言ったのは、お前が思ってることも含めて俺に相談してくると思ってたんだ。案件を木村に引き継いだことを言ったわけじゃない。お前のこと無責任だとかそういう風には思ってない。誤解を招く言い方をして悪かった」

「いえ・・・」

そんなに改まって謝られると、こちらとしてもかなり気まずい。
自分勝手な理由で勝手に行動していたのは確かなのだ。

「何か理由がある、とは思ってたんだ。その理由が知りたかったのに、お前は俺が近づく隙も与えないし、業務での関りもスッパリ切ってしまって・・・そこまで徹底するには理由があると思ったからしばらくは様子をみるつもりだった。

でも、いつまでたってもお前は相談してこないし、すれ違いすらしない。次の案件も木村がやることになって、いよいよ避けられてるって気づいたんだ。」

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