拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
「抱き合ってるように見えたから」

「ちがっ!付き合ってなんかないから」

「じゃあ、これから付き合うの?」

「付き合わないよ」

抱き合ってるって・・・不意打ちでキスされたのをよけられなかっただけで、抱き合ったつもりはない。
誰とでもあんなことするヤツだと思われただろうか。牧野くんに見られたこと誤解されたことがショックで口がきけなくなってしまう。

何となく気まずくなり、お互い沈黙してしまい、空気をかえようと話しかける。

「土曜日の飲み会は何時から?」

「また早めだって言ってた。17時から新宿」

「うん、了解」

食事を終えてお店を出て歩いていても何となく会話が続かない。
私は牧野くんが何を考えているのかが不安で、何を話していいのかわからない。
あの場を見たのなら、浦橋くんが私にちょっかいを出していることは気づいただろう。私は浦橋くんの告白に応える気はないが、変に気を遣われてこの先牧野くんと一緒にいる時間が削られるのは避けたい。

「牧野くん、これからまた課題集まるの?」

「いや、今日はもうなし」

・・・いつもならお茶でもするか、とか、コンビニ寄ってく?とか何となく門限ギリギリまで一緒にいることが多かったが、今日は誘てくれない。
やっぱり変に誤解しているのかもしれない。

ついつい俯いて足元を見ながら歩いていると、だんだん悲しくなってきて、せっかく牧野くんと一緒にいるのに早く一人になりたくなってくる。
自分の矛盾した気持ちにどうしたらいいのかわからず、泣きそうになる。

不意にポン、と頭を撫でられて牧野くんの顔を見上げると困ったように、ふっと笑った。

「どうした。元気ないな」

「・・・ううん。そんなことないけど。牧野くん・・・もう部屋もどる?」

「・・・うん。お前は?この後なんか用事あるの?」

「ううん、何も」

「そっか。じゃあ行くか」

やっぱり誘ってくれない・・・。結局牧野くんと別れるまで、元気が出ないままだった。

週末、第二回目の同大学の飲み会だった。結局、浦橋くんと抱き合ってるところを見られた日以来、今日まで2人で会うことはなかった。
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