拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
エントランスに着くと、携帯が鳴っていることに気づく。牧野くんかな?と半分期待しながら見ると、浦橋くんの名前が表示されている。こんな時間に何の用だろ。今は外だし、部屋に帰ってから折り返しすればいいか、と電話には出ずに歩き出すと、後ろからポカっと頭を叩かれた。

「ったく!無視すんなよ。今着信気づいてただろっ!」

浦橋くんが不貞腐れた様子でスマホを片手に歩いてきた。
ヤバい、着信無視したところ思いっきり見られてた。

「・・・ごめんね。荷物あるし、部屋帰ってから掛けなおそうと思ってたの」

「何?お酒?めずらしいね。一緒に飲む?」

「・・・もう遅いし、寝酒にしようと思って買っただけだから」

「寝酒って・・どうしたの?何かあった?」

「・・・今日飲み会だったんだけど、少し疲れちゃった」

行かなきゃよかったな、って心の中で付けたし、今頃牧野くんたちはどこかにしけ混んでるのだろうか、と思うとまた胃がムカムカしてくる。もう余計なことを考えずに寝てしまいたい、と思い、じゃあ、またね、と踵を返そうとすると、後ろからふわりと抱きしめられた。

「元気ないね。慰めてあげようか。」

またこの人は・・・スキンシップが多いのはだいぶ慣れたが、こんな夜中とはいえ、まだ人目のあるところで抱きしめたりするのは本当に勘弁してほしい。

「間に合ってます」

そう言いながら両肘で浦橋くんの腕を払いのけると、後ろに距離をとった。

「何だ、残念。弱ってそうだったからチャンスかと思ったのに」

ふふっと笑いながら言う浦橋くんはどこまで本気なのかわからない。

「俺さ、マジなんだけどな。あと1週間で研修も終わるし結構焦ってるんだ」

どう答えていいのかわからずに無言でいると、はあ、とため息をつき、飲みすぎるなよ、と言いコンビニへ向かって行ってしまった。私も浦橋くんの背中を見送りながら、はあ、とため息をつき、自室へ戻った。

さっきまでは酔っぱらって寝てしまう気満々だったが、少し体のだるさもとれてきてたので、さくっとシャワーを浴びてしまい、それから眠れなかったら少し飲もう、と決めシャワーを済ませる。

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