拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
トイレから戻ると、陽美ちゃんに一緒にあっち行こうよ、と牧野くんの方を指さされたが
ちょうど店員さんが大量の飲み物をもってきたところだったので、これ配ってから行くね、と先に陽美ちゃんが牧野くんがいるテーブルまで行ってもらった。

しばらくしてから陽美ちゃんのところに行こうと思っていたのだが、あちこちで話し込んでしまい中々辿り着けない。牧野くんも陽美ちゃんも席を移動してしまっていてどこにいるのかわからない。

チラっと後ろを振り向くと、牧野くんが5、6人で賑やかに話しているところだった。

「やっぱり忙しいの?」

「遠征が多くて、移動時間がやたらかかるんだよ」

「彼女とかいても会う時間ないな。ってか牧野って彼女いるの?」

「うん、いる」

「寂しいとか言わない?」

「寂しいっていうか、スケジュールがなかなか合わないね、っていうのがしょっちゅうかな」

・・・・後ろから聞こえてくる会話に、振り向けなかった。

今、確かに牧野くんは『彼女いる』と答えていた。

聞き間違い・・・ではない。聞き間違いだったらどんなにいいだろう。

いつからだろう。どんな人だろう。どっちから告白したんだろう。
・・・だめだ、色んなことが頭をよぎるが、頭の中が整理できない。

少し外の空気を吸ってこよう、立ち上がろうとしたとき、隣にあったグラスを倒してしまった。拭かなきゃ、と思うのに、体がうまく動かない。
隣に座っていた同期に、ごめんね、かからなかった?と声をかけると、大丈夫だよ、そっちこそ平気?と言って私の手元を拭いてくれる。

その優しさが胸にしみて、涙が落ちそうになる。。慌てて鼻をぐすっとすすると、もう一度周りに謝りながら、布巾もらってくるね、と声をかけて席を立った。

店員さんに布巾を返してトイレに行き一人になると、力尽きた。
さっきまで涙をこええるのに必死だったが、今は涙が出ることはなかった。

しかし、体に力が入らず、これ以上飲み会の席にいるのは無理そうだった。しばらく時間を潰してから席に戻ろう。
ずっとトイレにいるのも変なので、トイレの横にあった従業員用の入り口からそっと外に出る。

2軒横のお店の前まで移動してベンチに座る。
携帯くらい持ってくれば良かった。カバンも置きっぱなしで来てしまった。

どれくらいたっただろう。そろそろ戻らないと、と思うのだが、体が動かない。しかし、お開きの時間なのに私の姿がなくカバンだけポツンと残されても困るだろう。

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