40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「ねえ、ダディー」

樹さんの体がびくっとなった。
もう、マナちゃんが樹さんの娘さんであることは、明らかだった。

「父の日に送ったネクタイピン……ちゃんと使ってくれてる?」
「あ、ああ……」
「本当に?」
「ああ……」

(押されてる樹さん、初めて見たわぁ……私も写真撮りたい)

「ユーカ!」
「は、はい!」
「ちゃんとダディ、桜のネクタイピン使ってた?」
「さ、桜の……?」

私は2度、それを見た。
1度目は、樹さんとの衝撃の出会いの瞬間にタックルかました日。
そして2度目は……思い出すだけで顔がトマトになるので、あえて思い出さない。

(そうか、娘さんからのプレゼントだったんだ……)

一瞬、胸が痛んだ気がするのだが

「ちゃ、ちゃんと使ってたよ」
「やったー!」

と声は笑いながらも、マナちゃんはスマホ画面をいじっていた。
どうやら早速動画の加工を始めていた。
樹さんは、頭を抱えて肘をテーブルにつけた。

「い、樹さん……?大丈夫ですか……」
「…………言いたいことがあるなら、言ってくれ」

まるで死刑宣告でも待つかのような表情。

「すごく元気な……娘さん……ですね」

私がそう言うと、樹さんは、今までで1番長いため息をついた。
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