悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!


でも、ここで上がらないのは、国王様の言葉を聞かないと言う意味に捉えられてしまう。

散々迷ったけれど、時間にしてはたぶん数秒――。

わたくしはトーマ様の差し出された手を取って、祭壇の上に1歩踏み出した。


祭壇の上だけれど、国王様と王妃様の手前……そして会場内にいる貴族の方々を見下ろす形になり、ものすごく目立っている。



「レティシア」



そんな中、トーマ様はよく通るボイスでわたくしの名を呼んだ。


――ついに断罪の時が……。


覚悟を決めたわたくしは、国王様と王妃様、会場の皆様に対して横を向く形になることも気にせず、トーマ様を正面から見た。


――これでわたくしは、この国から……。


スゥーッと息を吸う音が聞こえたと思ったら、目の前のトーマ様が私に向かって膝まづいた。



「っ!?」



はっ!?どうなっているの?

みんな見ている前で王太子が膝まづくなんて……それも、わたくしに。


今声を出さなかったわたくしをだれか褒めて欲しい。

< 57 / 65 >

この作品をシェア

pagetop