同期に恋してしまったら~友達からはじまる恋ってありますか?~


「だからね。どうしようもないヤツなんですよ。わたし。」

結局次の日、専務から連絡が来たのは7時半ごろで…。

「悪いな。遅くなって。」

と言いながら、行きつけだという小料理屋に連れてきてくれた。
会社のおかかえ運転手付きの車でやってきた専務は、小料理屋で降りると車を社に返したようだった。

「そんなことないだろ?恋したらそうなるよ。みんな。」

料理は結構おいしくて日本酒も進み、なんだかほろ酔いになっている自分がいる。

きっとべらべらと何やらまくし立てている気がする…
と思いつつも…
お酒の力を得た、わたしの口は…
日ごろからたまっていたものを吐き出そうと、必死になっているらしい。

まぁそれほど、最近の自分の向坂に対する態度が自分なりに情けなくって、けど、どうすることもできずに、もんもんとしていたってことなんだろう。

「こんなにずっと好きになった人なんてはじめてなんですよ。わたし。」

「そうか。それはでも本気で好きだからだ。だから臆病になる。」

専務は、相談に乗ってやるぞという名の誘い文句かと思ったのだけど、今までの限りではいろいろとほんとに聞き役にまわってくれていてついつい話してしまう。

「けど、もうどうにかしないと…後がないんです。もう友達っていう心地いい関係も維持できなくなっちゃう。」

「まぁそれはそうだな。男と女に友情なんてないからな。」

「え?」

専務がにこっと笑ってわたしを見た。

「ないな。俺は断言する。だから、相手もおまえとそんな関係のままずっと甘んじてるってことは…脈ありってことだ。」

「脈…あり?」

「じゃなきゃ、そんな仲良くしようなんて思わないね。ふつう。まぁ俺なら。」

「……」

「まぁだから…今だってそういうことだ。俺にはおまえに対する下心はないわけじゃない。」

「はぁ…」

専務が突然わたしに顔を近づけてきたのでビクッとする。


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