僕等はきっと、満たされない。

帰ったら郵便受けに
綺麗な和紙の紙袋が入ってた



微かに香る

記憶に残る匂い



蘇る記憶に

胸が苦しくなった



部屋で紙袋を開けた

お香だった



すぐに彼がどこに行ったのかわかった



京都



このお香

あの人が実家に帰るたびにする匂いだった



あの人は京都の人だった



出会った頃は京都弁だった


私が笑ったから

私と話す時は綺麗な標準語を使ってた


たまに間違って京都弁が出ると嬉しかった


家族や地元の人と電話をする時だけ

上品な京都弁を使ってるあの人の後ろで

それを聞いてるのが好きだった


あの人が私の知らない人になったみたいで

また違う魅力を感じた



いつか私のことも
京都に連れて行ってくれるのかな?

そう思っていたのに

あの人は私を京都に連れて行ってはくれなかった



私が京都に行ったのは

あの人と別れて

しばらく経った頃だった



記憶を辿って

ひとりであの人の実家を訪れた



行った理由は

友達伝で知った

彼の訃報だった



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