僕等はきっと、満たされない。
お香を和紙の袋に戻して
引き出しにしまった
あの人の匂い
もぉ思い出したくないのに
まだ忘れたくない
あの人が実家に帰ると
必ずする香り
品があって
高貴な香りだった
宙くんが
たまたま私に選んでくれた香り
あの人と別れて1年も経たない頃
共通の友達が教えてくれた
「この事故って…」
友達がスマホで見せてくれたニュースは
バイク事故の記事だった
京都老舗旅館の若旦那
バイク事故で死亡
あの人だった
別れの言葉を言われた時より
ショックで
信じられない出来事だった
涙で滲む画面で
あの人が結婚していたことも知った
私と別れてすぐ
あの人は結婚してたんだ
あの時言ってた好きな人って
奥さんのことだった?
ホントにいたんだ
あの人は私を旅館の女将に選ばなかった
きっとふさわしい人を愛して
将来を進んでいこうとしてた
それなのに…
あの人は
本当にいなくなった
この世界から