僕等はきっと、満たされない。

あの人の命日

今日で1年



お香を焚いてみた



あの人の訃報を知って

京都の旅館を訪ねた時

同じ匂いがする人がいた



一見さんの私にも

「ごゆっくりおくつろぎおいでやす」

笑顔で私に声を掛けてくれた



和服姿もシンプルにまとめた夜会巻きも

よく似合っていた



最愛の人を亡くしたように見えないくらい

凛としてた



あの人が選んだ人



気持ちが強い人



あの人が私を選ばなかったことに

納得した



私はきっと無理だった

あの人が私の前からいなくなってから

しばらく泣いてた



訃報を知った時は

立ち上がれなくて

友達の前で泣き崩れた



もぉ私のあの人じゃないのに

泣いてもあの人はかえってこないのに



京都の旅館を訪ねたのは

最後のお別れのつもりで行った



旅館の中庭にある献花台に

お花をあげて

手を合わせた



和服姿の彼の写真があった

私の知らないあの人



あの人は
大学時代もたまにバイクに乗ってた

私のことは一度も乗せてくれなかった



「晴に何かあったら嫌だから…」

あの人はそう言ってた



あなたに別れを告げられるくらいなら

一緒に何かあった方がよかったな…


献花台の前でそう思った



一緒に連れて行ってくれたら

泣かなくて済んだのに…



誰も連れていかなかった

今は向こうで誰を想ってる?



私があなたを忘れられないように

あなたの心にも

少しだけでいいから…

あなたと出会って過ごした約7年の私たちが

残ってたら

私は…



私はそれで…



私はそれで…



私はそれでも

満たされない



ずっと一緒にいたかった

あなたと




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