魔法の恋の行方・7日目の恋(シリーズ5 ダリウスとリセ)
<リセの宿泊所・その2>

<このほうが・・いい>

あの湖のほとり・・
ダリウスの言葉が響いた。

リセは髪を束ねるのをやめて、
手早くブラシでとかした。

それから
小さなポーチに入っていた、
まったく使わなかった口紅を手に取り、薄く唇に引いた。

小さな鏡の中のリセは、
いつもと少し違う・・

顔色もだいぶ良くなったように思える。

ふわふわのピンクのドレスも、
ヒールも、口紅も落ち着かないが、
新しい生活のきっかけにはなりそうだ。

最後に
ロッカーの中がすべて空なのを確認して、リセはトランクを持った。

警備員室で入館証を返却すれば、
ここへは二度と来ることはない。

ダリウスの事も・・

リセはまだうっすらと残っている、頬の傷に指をあてた。

魔女の血は甘いのだな・・

彼は傷をゆっくりと、舌先でなぞった・・・

あの時は、
この世界にダリウスと自分だけしか存在しない・・
そんな気持ちだった。

好き・・愛している・・
愛しい・・・恋している・・

リセには、どの言葉もしっくりこなかった。

それでも自分の魂のどこかが、
ダリウスと重なっている気持ちがした。

でも
彼の人生に私は入れないし、
入る事もない・・・
そうでしょう?

リセは自分に言い聞かすように、
警備員室に向かった。
< 49 / 54 >

この作品をシェア

pagetop