エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 海翔の取り皿に入れようとした、さつまいもの天ぷらを絨毯に落としてしまった。

 ふたりの会話を聞く限り、布施と瑞希が近々結婚するという前提があるようだ。

 そうなったのはたぶん、布施がそのように説明したからだろう。

 瑞希は婚約指輪を受け取らなかったというのに。

(私が承諾しないから、外堀を埋めるつもりなんだ)

 これから毎日、早く入籍しろと両親にせつかれるのは想像にたやすい。

 非難の目を布施に向けたが相変わらず視線は合わない。

 涼しげな顔で父のグラスにビールを注ぎつつ、「お父さんはビールの銘柄にこだわりはありますか? よければ今度、ドイツビールを差し入れたいのですが」などと父との仲を深めようとしている。

(そうだった。布施さんは用意周到に攻める人だった)

 要人との外交交渉に臨む時、そこがスタートではなく、あらかじめ裏であらゆる手を尽くす……布施はそういう仕事の仕方をする人だったと、瑞希は関心と呆れの交ざった心持ちでため息をついた。

 きっと今日はあえて瑞希のいない時間を狙って挨拶に来たのだろう。

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