エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「情勢が悪化して、職員の安全のためにしばらく大使館を閉鎖することになったんだ。おそらく俺はこのまま日本に二、三年いて、その後はまた古巣のフランスだろう。短い任期だったな」

「そうだったんですか。よかったとは言えませんが、紛争地帯からの撤退に私はホッとします。それに布施さんのやりたい仕事は、フランスにあるんですもの」


フランスとの貿易を円滑にするために外交努力するのが、彼の専門であった。

うまく話題を布施のことだけに変えられたと瑞希はほんの少し気を緩めかける。

しかし、「森尾は?」と問われてしまった。

「昨日、本庁に顔を出して森尾がいないことを知った。一身上の都合での退職と聞いたから、他にもっとやりたいことが見つかったのだと思っていたんだが……」

布施の視線が、瑞希の運んだ長テーブルや制服に向けられる。

「サービス業とは意外だった。ああ、否定しているつもりはない。なくてはならない立派な仕事だ。だが、ホテル業界に森尾が興味を持つとは思えなくて疑問に感じている」

真顔になった布施の目が真意を問いただすように細められ、瑞希の背に冷や汗が流れた。

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