エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 そう説明してから、自嘲気味に笑って訂正した。

「いや、交際中とは言えなかった。かつて彼女は俺を慕ってくれていましたが、今はもうその想いはないのかもしれない」

 指輪を受け取ってもらえなかったことが、胸に痛い。

 強引に自宅に押しかけなければ会うこともできず、避けられているのではないかと思った時もある。

 顔を曇らせた布施とは逆に、京香が嬉しそうな目をした。

 布施を落とすチャンスだと思ったのかもしれないが、その自己中心的な心根に布施は呆れていた。

(森尾なら、相手の不幸を喜んだりしない。俺のために妊娠を隠し、ひとりで苦しむ道を選ぶくらい強く優しい女性だ。だからこそ、今後は俺が守りたい。義務でも責任でもなく、これは愛情)

「潤一さんはつらい恋愛をされているのですね。私、待っていてもいいですか? その方とうまくいかなかったら、私と――」

 京香が切なげに微笑んだ。

 殊勝なふりをしても、布施が恋敗れるのを待っているというのだから狡猾だ。

 テーブルの上の布施の手に、彼女が手を重ねようとする。

 それをサッと避けて、布施は冷たい目を向けた。

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