エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
ドア前に佇んで乱れた鼓動と気持ちを立て直そうとしていたのは、ほんの十数秒だ。

それなのに蛭間に目ざとく見つけられ、注意されてしまった。


「みんなが忙しく働いているというのに、なにをさぼっているんだ」

「すみません」

謝ってからすぐにバックヤードに繋がる別の扉の方へ歩き出す。

会場内の机や椅子は整っているため、演台用の水差しとコップを取りにいこうと思ったのだ。

けれども蛭間が後ろからついてきて、まだブツブツと文句を言ってくる。

「君はこの仕事をなめているんだろ。有名大学卒で外務省に勤めていたと聞いたぞ。腹の中では俺たちを見下しているんじゃないのか?」

(そんなこと、少しも思ってないのに)

聞こえないふりをして歩き続けながら、瑞希は納得もしていた。

瑞希が自分から出身大学や前職について人に話したことはない。

決して自慢にはならず、逆に偉そうにと反感を買ってしまうことをわかっているからだ。

それでも履歴書に記入した経歴が、こうやって広まってしまう。

働き口があることに感謝して真面目に一生懸命働いているつもりでも、蛭間のように敵意を向けてくる人もいるようだ。

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