エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 ティッシュでは間に合わないほど、顔も手もなぜか足までベトベトである。


「海翔、右手拭くよ。それは左手」

「ママ。おとーしゃん、かえりゅ?」

「うん。あと二回寝たら帰ってくる。ほら、次はお口、拭くよ。えっ、なんで鼻の穴に種が!? 詰まったら大変。入れて遊んじゃダメ」


 潤一は今、国会議員に随行してフランスに一週間の出張中。

 その間、海翔とふたり暮らしは寂しいので実家に戻っていた。

 久しぶりにたっぷりと祖父母に構ってもらえて海翔は楽しそうだが、そろそろ父親も恋しくなってきたのかもしれない。

 潤一と一緒に暮らし始めて半年ほどが経ち、父子の絆がしっかりと結ばれた証拠だと瑞希は嬉しく思った。

「お父さんに早く会いたいね」

 瑞希も潤一の不在に寂しくなってきている。

(パリ時間は三時か。潤一さん、ぐっすり寝てる頃だね)

 約一万キロ離れた地にいる夫を想っていると、ソファで水羊羹を食べている父が笑って言った。


「海翔の家はここだもんな? じいじとずっと一緒にいるんだろ?」

「ちあうよ。海翔のおうち、あっち。かえりゅ」

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