エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
(それなら、人を変えてのダブルチェックの方が意味があるでしょう。この仕事を始めて問題を起こしたことは一度もないのに、信用ならないってひどい)

 暇なクロークは蛭間と鏑木が入るという。

(なんだ、鏑木さんとふたりきりになりたかったのか)

蛭間の魂胆に内心呆れつつも、瑞希は「わかりました」とカウンターから出た。

呼ばれた鏑木が、走ってはいけないという決まりを忘れてパタパタと駆けてきた。

「急がなくていいんだよ」と言う蛭間の声は優しい。

心の中でため息をついた瑞希が、ふたりと入れ替わりにバックヤードに戻ろうとしたら、クロークに客がやってきた。

お洒落なカラーワイシャツにトルコ石のポーラータイをつけた初老の紳士で、瞳の色は青。

その客がカウンター内の蛭間に対し、英語で話しかけた。

そのまま数歩、前に進んだ瑞希だが、蛭間の困ったような対応の声に気づいて足を止めた。


「プリーズ、ワンモア……。聞き取れない。どうしよう。鏑木さん、英語は?」

「私はまったく話せないです。ごめんなさい」

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