エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
ふらつきながら駅方向へ歩く布施の背を、気づけば追っていた。

タクシーに乗って帰ろうとしてくれるならこのまま声をかけずに見送ろうと思うが、電車移動は危ないのでやめてほしい。

けれども、もっと悪いことに布施はバーの看板を掲げる店に入ろうとしていた。

(まだ飲むつもり!? ふらついているのに駄目だよ。止めないと)

布施がバーのドアに手をかけたところで、瑞希は追いついた。

腕を掴んで、ドアから引き離す。

「森尾?」

呼びかける声は少々呂律が回っておらず、目は潤んでぼんやりとしている。


「布施さん、飲みすぎです。タクシーを呼びますから、それに乗って帰ってください」

「放っといてくれ」

「そんなわけにいきません。酔い潰れて立てなくなりますよ」

「それはいいな。なにも考えなくていいように、酔い潰れたい……」


布施が力なく笑った。

頼もしい彼の、こんなに弱っている姿を見たことがなかったので、瑞希は動揺した。

(婚約解消の痛手、私が思うより深いみたい。布施さんは婚約者の京香さんのこと、愛しているんだ)

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