愛しの鳥籠〜独占欲は凶器篇〜
警察署まで車で来た僕とランは電車で来た大津を家まで送ることにした。
車中はなんとも重苦しい雰囲気で、特に愛梨沙の事を気に入っていた大津はとても苦しそうでずっと俯いていた。
「…そのうち、ひょっこり帰って来るといいよな…」
僕が前を見据えたまま後部座席の大津に聞こえるように呟くと、大津は堪えきれなくなったのか俯いたまま大粒の涙をボロボロ落とした。
大津の家に着いてもその涙は止まることなく
「すいません…ありがとうございました…っ」
そう絞り出した言葉に「また、店でな」と声をかけてやるので精一杯だった。
ランは終始無言で、僕も無言のまま自宅に帰って来た。
ふたりでリビングに向かい、ランはそのままコーヒーを淹れて、ペアのマグカップをローテーブルに置いた。
そして、
「…なにも、聞かないの…?」
ブラックコーヒーを飲みながらランがポツリと言葉をこぼした。
「僕には、知る必要がないんだろう?」
真っ暗なテレビ画面を見つめながら僕もコーヒーをひと口飲んで、言葉を吐く。
「それとも、知って欲しいの?」
「…ううん」
バツが悪そうにランは俯いて首を力無く横に振った。