愛しの鳥籠〜独占欲は凶器篇〜
「はい、今日は講義ないんで今からクローズまでなんです」
大津と話していると言うのに愛梨沙は、チラチラ僕の方を見て来る。
不快極まりない。
が、相手は大事なバイトだ。
あまり露骨に嫌な顔するわけにもいかなかったので、思いっきり作り笑顔を見せれば、愛梨沙はそのチークの乗った頬を更に赤く染めた。
そんな愛梨沙に対して僕は吐き気しか覚えない。
早く、早く、ランに逢いたい。
ランが待つ我が家に帰りたい。
ラン。ランランラン。ランランランランラン。
ーーいい歳して、これではまるで母親が居なければ生きていけないような乳飲み子のようではないか。
けれど、こんな僕をまるごと受け入れる器が、ランにはあるのだ。
「ーーィ、ーーパイ…ッ!」
本当にランは凄い。
考えれば考えるほどに愛おしい女(ひと)。
あぁ、今夜も深く激しく彼女を翻弄したいーーー、
「ユキ先輩っっ!!!」
強く大きな声で名を呼ばれ、僕はハッと我にかえる。
「もぉ。だいじょうぶですかぁ?」
愛梨沙があざとさ満載のきゅるんとした上目遣いで僕の顔を覗き込んできた。
愛梨沙はいわゆるタヌキ顔の美少女で愛嬌もあるからか人気で、彼女目当てでここに通う客も少なくない。
…僕にとっては不快な人間の何者でもないが。