社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 もし、犯人がおばさんだとするなら、私が隣にいるのも目障りだと思ったからに違いない。
 でも、どうして、そこまで――?

「着いたぞ」

 平静を保とうとしているのか、要人は深呼吸をし、手を差し出した。

「家……?」 
「ああ。近いうちに、ここへ引っ越すつもりで準備していた」

 田舎風の家は、緑を感じられるよう柿の木や梅の木、紫陽花などの木、庭には小さな畑があった。

「古民家を移築してもらった。この家は、志茉の両親が住もうと思っていた家だ」

 私が大学を卒業し、経済的に余裕ができたら、田舎に家を買って暮らすのだと、両親は語っていた。
 私も要人も二人が、田舎へ行き、家を探していたのを知っている。

「庭の植物もそのまま植え替えてもらった。まだ俺は田舎暮らしできないからな」

 要人は私に合わせて、のんびり田舎暮らしをするつもりだったのだろうか。
 私ならともかく、要人はできない。
 郊外に移築をしたのは、きっと私のため。

「前のアパートに雰囲気が似てる……」

 両親は若くして夫婦になった。
 結婚式の写真はなく、身内は誰もいないと、私に言っていたから、いろいろ事情があったのだろうなと思う。
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