社長はお隣の幼馴染を溺愛している《宮ノ入シリーズ④》
「言ってなかったし。でも、志茉が結婚して、湯瀬さんもふっきれて、あたしと付き合ってますけどね?」
「えっー! それも初めて聞いたわよ!?」
「つい、昨日からですー」
「そっか……。うん。おめでとう」

 恵衣はお祝いの言葉に微笑んだけど、周囲を見回し、小声で私に言った。
 
「言っておくけど、仁礼木先輩は湯瀬さんの事。すぐにわかったわよ」

 要人がいないことを確かめたようだった。
 本当にどれだけ、要人は危険人物なのだろうか。

「湯瀬さんは大丈夫だったの!?」
「うん。無言の圧をかけられたらしいけど、特に攻撃はしてこなかったって」
「攻撃って、要人は猛獣なの?」
「しっかり猛獣を繋いでおくのよ? 世間のためにね」
「はい……」

 今になって知る要人の過去。
 でも、私も要人を責められない。
 この後、一番の被害者と思われる湯瀬さんに、平謝りしたのはいうまでもなかった――

 ◇◇◇◇◇

 夏になって、ようやく噂も落ち着いた頃、私は経理課から秘書課へ正式に異動した。
 経理課で引き継ぎを終えてからでないと、異動はしないと要人に言ったからだ。
 要人も(一応)社長だから、そこは守ってくれた。
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