社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 そう告げると、さすがのおばさんも黙った。
 私の服装が、遊びにいくような服装でないことがわかったのだろう。
 おばさんに会釈して、前を通り過ぎ、駅へ向かう。
 日曜日の朝だけあって、人の流れは緩やかで、電車の中も空いている。
 霊園のある駅に降り、近くの花屋に寄って、バスに乗り換えた。
 山のほうにある霊園には、遅咲きの濃いピンク色の桜の花が咲いていた。
 
「おはようございます。いい天気ですね」

 霊園には、お寺の方がいて掃除をしていた。
 雨が降った後の霊園は、山からの木の葉が落ちている。

「……おはようございます」
「今年も待っていましたよ」

 昔から、私を知っているお寺の方は、それだけ言って、また掃除を始めた。
 お墓があるまでの道、桜の木からは花びらが降り注ぎ、地面を桃色に染めて美しい。
 今日の朝方に降った雨が、ところどころに水溜まりを作り、水面に花びらを浮かべていた。
 お墓の前に行くと、すでに花と両親が好きだった店の和菓子が置いてあった。

「要人ね」

 誰がきたのか、すぐにわかる。
 自分が持ってきた花を飾り、手を合わせた。
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