もふもふになっちゃった私ののんびり生活 ~番外編

「ルリィ、ここにいたのか。無事で良かった」
『ヴィクトルさんっ!!』

 上から降って来た聞きなれた声に緊張していた気が一気に緩み、見上げて見えた見慣れた顔に気づくと飛び上がって胸に飛び込んでいた。

「……くっ……、小さくてふ、ふわふわで……柔らかい、な」
『ヴィクトルさん、ヴィクトルさんっ!!良かったーーーっ!気が付いたらこんな場所にいて、これからどうしようかとっ!!』

 身体に回された腕が、そっとまるで壊れ物を触るように身体を撫でていたが、そんなことを気にしている余裕は無かった。

『うううう……もふもふするのはいいけど、やっぱりされるのは、こう、身体がどうにかなりそうに……。ごめんなさい、ヴィクトルさんっ!!今度こそ、今度こそもふもふする時はほどほどにするからっ!!』
「あ、ああ、いや。俺は大きいから、ルリィの小さな手に撫でられてもどうにかはならないから、気にしなくていい。ああ、ホラ、ルリィ。とりあえず落ち着いて」

 
 ポンポンっと背中を叩かれて、初めて自分がヴィクトルさんに抱っこされていることに気づく。

 うわっ!そういえば、獣姿でヴィクトルさんに触れられたのってもしかして初めてかも?

 人の姿でも今でもそっと壊れ物を触るかのように頭を撫で来るくらいだから、これ程くっついているのは初めてのことかもしれない。
 そう思うとむずむずして飛び降りたい気持ちもわいて来たが、なんとなくポンポンとやさしく背中を叩くリズムが心地良くて離れがたい気もして……。

 うん。今は人化出来ないし、獣姿だし店に戻るには抱っこされてても仕方ない、よね?街中をこの姿でちょろちょろ足元を歩くと危ないし!

 うむうむと心の中で言い訳しつつ、力を抜いてヴィクトルさんの抱っこする腕に身を任せる。


 そうしている間に、胸元のセフィーの枝のネックレスがヴィクトルさんの身体に張り付き、電気ショックを流して攻撃していることにはまったく気づくことなく、抱っこされたまま屋根に飛び上がったヴィクトルさんと屋根伝いに店に戻ったのだった。

 その時に、ああ、その手があったか!とは思ったけど、屋根の上からではおばあさんの店がどこにあるか私では判断できないし、結局自力で戻るには空を駆けるしか無かったのか、と空から街並みを見下ろしつつのんびりと思っていたのだった。



 因みに当然セフィーの圧力により、それ以上ヴィクトルがルリィの身体を撫でることは出来なかったという。

 そして風のように駆け抜けた銀色の獣が街でその後しばらく話題になったとか、ならなかったとか。

(当然ルリィはその噂に気づかなかったが、おばあさんもアイリちゃん、ヴィクトルも、そして見守り隊も噂の主がルリィのことだと気づいていた。そして見守り隊が見逃して街のあちこちでくやしがる姿がしばらく見かけたとかなかったとか( ´艸`)




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