離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「違う違う。多分他の男に声をかけられないか気にしてるんだろう」
「え? そんなことないです」
そもそもこれまでもそんな機会などあまりなかった。
「いや、今日の和歌ちゃんはかわいいよ。それに白木さんの孫ってどんな子か、みんな興味があるんじゃないかな?」
「そうなのかな」
また祖父の偉大さを知る。
「ごめんなさい。少し外で休憩します」
そう言い残してロビーに出て、お手洗いに向かった。
幸い人(ひと)気(け)がなくホッと息をついた。鏡の前に立つと疲れた顔の自分がいた。慶次さんに会う時はもっと笑顔でいなくては。
とりあえず深呼吸をしていると鏡に女性の姿が映った。七尾さんだ。彼女はわたしと鏡越しに目を合わせた。
「ピンク、かわいらしくてとってもお似合いですね」
「……ありがとうございます」
気のせいだとは思うけれど、なんだか子供扱いされているような気がして少し心がざわついた。今の自分が嫉妬でおかしくなっているのはわかっている。けれどどうしても七尾さんのことになるとコントロールが利かなくなる。
さらに追い打ちをかけるような言葉が続いた。
「差し出がましいようですけど。社長との関係、早く収まるところに収まるといいですね」
彼女の言葉にわたしの動きが止まる。彼女自身も言っていたが、こんなふうにただの秘書が上司のプライベートに、ここまで口を挟むのは普通ならばないことだ。
だからふたりの関係は〝普通〟ではないということ?
慶次さんがわたしのために色々としてくれてもずっと不安だった。その不安があふれ出してしまう。