離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
そつなくパーティーを終えたわたしは、それまで浮かべていた愛想笑いを完全に引っ込めた。帰りの車の狭い車内のことだ。それは慶次さんにはすぐに伝わった。
「和歌悪かったな。疲れただろう?」
「はい。でも今日一日パートナーとして付き合うという約束でしたから」
どうしても言葉が冷たくなる。しかしこれ以上傷つきたくないわたしは、そのまま言葉を続けた。
「離婚のことですが」
一瞬、慶次さんが息をのんだのがわかった。その後、静かだけれどわずかにいら立ちをはらんだ声が聞こえる。
「そのことはもう少し先にって話だっただろ」
「いいえ、もう待てません。速やかに手続きしてください」
冷静に伝えたつもりだった。けれど声が震えている。
「和歌、急にどうした? パーティーで嫌なことがあったのか?」
慶次さんが尋ねてきても、わたしはかたくなに頭を振って否定した。
「ごめんなさい」
「この間の俺の気持ちを聞いた上で、もう一度離婚をしたいと思ったんだな」
彼が言っているこの間というのは、唯たちと飲みに行った日のことだろう。あの日部屋でのことは後半、ほとんど覚えていない。
それを伝えなくてはと思った瞬間、バッグの中でスマートフォンが震える。着信を無視していると一度切れてまた鳴り始めた。
ディスプレイを確認すると祖父の秘書からだ。こんな形でかけてくるのはなにかあったのかもしれない。嫌な予感が体をめぐり、慌てて通話ボタンをタップした。