離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

 彼がわたしの顔を覗き込んできたので、思わずドキッとしてしまう。まだまだこの距離に慣れそうにない。

 いきなり顔が近づいてきてドキドキと胸がうるさい。

「それより和歌はいつまで俺のこと小田嶋さんって呼ぶつもり? 自分だって小田嶋さんなのに」

「え、確かにそうかも」

 そんなこと考えもしなかった。式の前にふたりで区役所に行き、婚姻届を出してきた。

 その時に夫婦になったんだ~という漠然とした感想しかなかったけれど、籍を入れたということは、わたしはもうすでに〝小田嶋和歌〟になっているのだ。

「では、小田嶋和歌さん。俺の名前は知ってるよな?」

「もちろんですよ。小田嶋慶次さん」

「正解。じゃあ呼んでみて」

「え、はい……あの、えと」

 彼の形のいい目がいたずらめいて見える。ちょっとおもしろがっているに違いない。

「慶次さん」

「ん? 聞き逃したかも。もう一回言ってみて」

「絶対聞こえてましたよね」

 思わず唇を尖らせて抗議する。

「ばれたか、でももう一回聞きたい」

 彼がそう言うのなら名前を呼ぶくらい……とは思うけれど、ジッと見つめられているとなかなか恥ずかしい。

 視線を逸らして、やっと「慶次さん」と名前を呼んだ。

「和歌、君に名前を呼ばれるのは新鮮でいいな」

「そうですか。わたしはなんだか緊張しました」

「まあ、それもすぐに慣れるだろう。あと気になるのは敬語かな。もう夫婦なんだ。堅苦しいのはナシで」

「はい……あ、うん。これはもうしばらくかかるかもしれません」
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